「えぇ――っ!!」
他人の心が『見える』という李青蘭の言葉に俺、倉沢諒司と品川恵利花は同時に驚きの声をあげていた。
「私、物心ついた頃から、他人の内なるものが見えてしまうんですの。
ただ、それを見抜いたのは美和だけですけれど…」
「ひとの内なるもの…ですか?」
「あたしも、嘘ならすぐ判るけどォ〜」
「嫌な特技だな、それ…」
「エリカさん。 あなた、…特別な力をお持ちのようですわ」
エリカの全身を透かす様に見ていた青蘭がまた、驚嘆すべき事を言いだした。
「あなたは、人類に幸福をもたらすために天界から降臨してきた《女神》の魂を持っておられます…」
意外な事の成り行きに、すっかり毒気を抜かれた俺達は〈時の回廊〉を後にして公園のベンチに身を預けていた。
「女神様ってか……」
「あたしも、指摘されて初めて、フツーじゃないのが判ったよ…」
つまり、こういう事だ。
人の輪にエリカが加わると、そのグループ全員に『必ず』幸運が訪れる。
その影響は、エリカ本人が抜けた後も全く変わらない。
「でもさァ、前のバンドには幸運がやって来なかったんだろ? 解散した位なら」
「それがねェ、……あたし以外のみんなが結婚するんで解散ってなったんよ…」
「それって有り得ねー!」
関わり合う者たち全てに幸福を与えつづけるエリカ。
ただ、本人は果たして幸せなんだろうか……
その時、スタジオで見たエリカの涙が脳裏に浮かんできた。
「あン… リョージったら、どうしたのよ?……」
「…単なる、気紛れさ」
俺は思わず、彼女をギューッ と強く抱き締めていた。