幸運の女神 13

朝倉令  2006-06-29投稿
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「えぇ――っ!!」



他人の心が『見える』という李青蘭の言葉に俺、倉沢諒司と品川恵利花は同時に驚きの声をあげていた。






「私、物心ついた頃から、他人の内なるものが見えてしまうんですの。
ただ、それを見抜いたのは美和だけですけれど…」


「ひとの内なるもの…ですか?」


「あたしも、嘘ならすぐ判るけどォ〜」


「嫌な特技だな、それ…」


「エリカさん。 あなた、…特別な力をお持ちのようですわ」



エリカの全身を透かす様に見ていた青蘭がまた、驚嘆すべき事を言いだした。






「あなたは、人類に幸福をもたらすために天界から降臨してきた《女神》の魂を持っておられます…」







意外な事の成り行きに、すっかり毒気を抜かれた俺達は〈時の回廊〉を後にして公園のベンチに身を預けていた。



「女神様ってか……」


「あたしも、指摘されて初めて、フツーじゃないのが判ったよ…」



つまり、こういう事だ。



人の輪にエリカが加わると、そのグループ全員に『必ず』幸運が訪れる。



その影響は、エリカ本人が抜けた後も全く変わらない。



「でもさァ、前のバンドには幸運がやって来なかったんだろ? 解散した位なら」


「それがねェ、……あたし以外のみんなが結婚するんで解散ってなったんよ…」

「それって有り得ねー!」





関わり合う者たち全てに幸福を与えつづけるエリカ。





ただ、本人は果たして幸せなんだろうか……




その時、スタジオで見たエリカの涙が脳裏に浮かんできた。




「あン… リョージったら、どうしたのよ?……」


「…単なる、気紛れさ」





俺は思わず、彼女をギューッ と強く抱き締めていた。






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