ロストクロニクル5―9

五十嵐時  2009-01-05投稿
閲覧数[397] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「タクト!しっかりして!」
パールの声でタクトは我に返った。
「タクト。俺はルパスの為に生きていくんだ。お前もどうだ?」
ウェイトは不敵な笑みでタクトを誘った。
「ルパスの仲間なんかになる訳無いだろ!目を覚ませ、ウェイト」
ウェイトに必死に訴えかけた。
「目を覚ますのはお前の方だ!さぁ、一緒にパラスを滅ぼそうじゃないか」
「断る!」
力を込めてそう叫んだ。
タクトの言葉を聞いたウェイトはみるみる内に態度を変えていった。
「・・・なるほど。それがお前の答えか。なら、今からお前と俺は・・・敵だ」
ウェイトは背の鞘から剣を取り出した。
「何してるんだ。止めろ!ぼくはお前とは戦いたくない!」
「黙れ」
そう言い残しウェイトの姿は消えた。
「消えた?」
「タクト。ウェイトはなぜ消えたの?」
パールの言葉には緊張感があった。
空気がはりつめる。
「ここだ」
ウェイトはどこからともなくパールのすぐ後ろに姿を現し、パールの鞘に収まっていた短剣を取り、パールの肩に突き刺した。
「のろまだな。お前の仲間は」
パールの悲鳴が辺りに響き渡り、地面に倒れこんだ。
「パールは関係ないだろ!」
タクトはウェイトに向かって走って行ったがウェイトはまた姿を消した。
「大丈夫か?パール?」
「わたしは、大丈夫よ」
血で塗れた肩を手で押さえながら精一杯の返事をした。
「ごめん・・・まだいるんだろ!出てこい!」
『木彫りの不死鳥』のおかげで岩肌の隅々まで見渡せるが、ウェイトの姿は発見できない。
タクトのベルズ鉱石でできた剣を持つ手にもより一層の力が入る。
「お前はいくら頑張っても俺には勝てないのさ」
ウェイトの自信に満ちた声が辺りを支配した。
「どこにいる!」
「ここだ」
突然タクトの目の前にウェイトが姿を現した。
「どうして・・・」
「お前は俺に一生勝てないのさ」
ウェイトは自分の大きな剣の柄でタクトの腕を叩きつけ、タクトの剣を奪い、腹部に突き刺した。
「お前ものろまだったんだな」
ウェイトの残忍な笑みを最後にタクトの意識は無くなった。
ウェイトは倒れたタクトの手に『木彫りの不死鳥』の『胴体』を握らせ、そして、パールの方へ近づいて行った。
「タクトによろしくな。あとそろそろお前の仲間が助けに来るだろう。この場所は伝えた」



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 五十嵐時 」さんの小説

もっと見る

ファンタジーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ