シア「ふわぁ〜なんか慌ただしかったなぁ〜ジノくんも変わった人だったし…ん?」
礼拝堂の掃除をしながら、椅子の下に何かが落ちていることに気付く
それは茶色の手の平ほどの袋で中に何か入っている。シアはとりあえず中身を出す。それは漆黒の指ほどの大きさのある宝石だった
シア「何これ?あれ…なんか力が抜けてく…」
シアは宝石の深い漆黒に吸い込まれそうな感覚に襲われた…
しかし奥の扉が開く音で現実に引き戻された
シスター「どうしたの?シア」
初老のシスターは心配そうに話し掛ける
シア「あっいえ、大丈夫です。先ほどの人達が忘れ物したみたいで…まだ町にいると思うので、届けて来ます」
そう言って素早く着替えて駆け出して行った
シスター「そういうところが心配なのよね…」
慌てて出ていく見習いシスターを見ながらシスターは小言を呟く
ウォーティアは外壁に囲まれており、出入口は北、東、南の3ヶ所に限られる
シアはとりあえず町の中央の広場に行くことにし、駆け出して行った
広場に到着すると噴水の近くで二人の子供がボールを使って遊んでいる
シア「えっと、どっちの方に行ったのかな?もし今からリックスに帰るなら、北側の出口かな?」
白いワンピースと青白く輝く宝石のネックレスを着けた少女は無垢な子供のよう駆け出して行く。しかしそれとは対照的に、空はいつのまにか厚い雲に覆われ暗くなっていた…
魔術師と炎術師は静かに互いの出方を見計らっていた。木々一つ一つのざわめきさえも聞き分けれるような静けさだった
先に均衡を破ったのはジノだった。素早く踏み込み間合いを詰める
すかさずリニスも臨戦体勢に入る。二人は同時に剣を振り上げた
しかし振り下ろす瞬間、リニスの左手に激痛が走る
リニス「くっ、またアイツが反応しているのか!」リニスは苦悶の表情を浮かべる
ジノ「これで終わりだ!」
完全にひと呼吸遅れているリニスに対して、ジノは剣を振り下ろそうとする
シア「ダメぇー!」
少女の甲高い声が響く
あまりの大きな声にジノは振り上げた手を止め、振り向いてしまった
シア「何してるんですか!二人とも…今すぐやめてください!」
少女は涙で目を赤く腫らしながらも、厳しい口調で言うのだった…