その部屋は”みるなのざしき”と呼ばれていた。
長い廊下を渡ると左のトイルと反対方向に位置していた。
”見るな”と言われれば、覗いてみたくなるのが子供心というものである。
誰も居ないある日を見計らって覗いてみたが、不思議なもの変わったところは何ひとつなかった。
ところがのある夜中
妹の「トイレ・・・」
の声に連れられるように、妹を前に長い廊下を渡るや否や、妹はいきなり問題の部屋”みるなの座敷”を開けてしまった。
そこに目にした光景は
父の上に股上った上半身裸の母の姿であった。
こちらを振り向いた口からは”ミ、タ、ナ”の言葉こそ出なかったが、「お父さんとプロレスごっこしていたの、さあ−、もう、寝ようかな〜。」
なにも分からない妹は
「ママ!パパをいじめてはダメ−。」
後日祖母談話「あの部屋はの〜、御茶飲水博士が鉄腕アトムをつくったように、あの部屋でお前達もつくられたのじゃ、言ってみれば我が家の研究所みたいなもんじゃ、その間は邪魔してはならんからの〜、”みるなのざしき”と呼ばれてきたのじゃ」
遠い昔の話である。