一方ランスォールたちの方もどうにかヘトラレスタの谷までの案内人を獲得し、身支度を整えた所だった。「じゃあ、シドマ。
ヨロシクな。」
「うん。レミス爺宛の手紙を届けるついでだからね。」
案内してくれるのは最初、小屋のドアを開けてくれた大男の息子のシドマ。
雪をシドマの後ろに乗せて前を走り、その後をランスォールとラウフが付いていく。
「お父様とよくここらの山に?」
雪が聞いた。
「うん。昼間はみんなと獲物を追っかけて、嵐の夜はああして旅人を捕まえて飲むんだ。」
「お母様は?」
「母ちゃんは三年前流行りの病で死んじまったよ。」マズイ事を訊いたと雪はそのあと暫く黙った。
「大丈夫かい?」
フォーのややごつめの手がシーラに差し出される。
今、目の前にあるのは濁流の川。
「だ、大丈夫です。」
「無理をするな。
ほら。」
「……。」
観念したように手を取ると体が軽く浮き川の上を跳んだ。
「あ、ありがとう…。」
「いや、いい。
それよりも、だ。」
フォーの顔が突然険しいものになる。
「気付いてるかい?」
「ええ。勿論。」
口の広がった袖の中でしっかりと武器を握り、警戒の色を濃くしながらシーラは答えた。