朝。
「ねぇ‥、新一。ひとつ気になる事が、あるの?」
「言えよ。」
「新一には、かわいそうな話なんだけどね。頭の中が、丸の形みたいに、穴が空いてるの。」
「穴が空いてるのか?」
「うん‥。」
「誰かといた。穴が空いてるの。」
優美は、少しずつ記憶が、戻り始めてる。でも、名前や声や顔は、まだ…。
「優美、名前は、何て言うんだ。」
「思い出せないの。」
「ゆっくり、思い出せば、いいよ。」
「そうだよね。」
「ねぇ、見て窓の外、夕日、綺麗。」
「ほら、見て、新一。」
「ホントだぁ。」
「チュ。」
「今、何した?」
「何もしてないよ。」
「俺が、夕日を見た時。」「キス――――――ぅ。」
「優美、顔が真っ赤だぞ。」
「分かってるなら、言わせないでよね。」
「ごめん。ごめん。」
「優美、もう、一回して。」
「やーだぁ。」
「もう、一回。」
「チェリーに、してもらって。」
「冗談。冗談。」
「もう、新一ったら。」
「優美、明日は、加賀美病院に、行くぞ。」
「何で?」
「リハビリだよ。」
「リハビリ?」
「そう。優美の足、動かないから、動くように、リハビリをするんだ。」
「優美の足は、リハビリをすれば、治るんだね。」
「そうだよ。」
「じゃあ、優美、頑張るね。」
「もう、寝るね。」