何歳(いくつ)になっても

内田俊章  2009-01-07投稿
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3人は、翔子の家で改めて自己紹介や家族紹介等を始めた。ところが、只野は余り多くを語らなかった。隼人と同じ年の男の子が居る事と、来月二人目が生まれる事、ご主人が大手建設会社の営業マンで、転勤でこの町に来たと言う事だけは分かった。しかし、女性として一番興味のある、ご主人との恋愛時代の話や馴れ初めは、翔子や晶子が自分たちの事を幾ら話しても、只野は自分の事を話そうとはしなかった。初対面でもあり、余りしつこく聞くのも悪いと思い、他愛のない話で3時間ほどが経ち、2人は帰って言った。
翔子は、只野夫妻には謎が多いと感じた。そして、ご主人が「木下」かも知れない、との思いも消しきれずに、(婿養子かも知れない)との仮説を立てた。しかし、その謎を解くすべは何も無かった。
翔子は、晶子に「午後から出掛ける」と言った手前、何か用事を作ろうと、隣町に住む高校時代からの同級生「三浦純子」に電話をかけ、家を出た。
翔子が純子と会うのは半年振りである。純子の家の居間に通されて翔子が目にしたのは、大量の往復ハガキだった。「何、このハガキは?」翔子はその一枚を手に取り、文面に目を通した。「えっ、することにしたの?クラス会」「だって翔子でしょう、2回目を早くやろう!って言ってたのは」
翔子のクラスは9年前に、一度『卒業10周年』でクラス会を開いていた。ところが翔子は、隼人を妊娠中で体調が悪く出席出来なかった。そして、半年程前、純子や何人かの友達と会った時に、『来年、卒業20周年で2回目をやる』との話を聞いた。その時翔子は「別に10毎にこだわる事は無いでしょう。私は前回出てないから、直ぐにでもやろうよ!」と純子達に迫った。その後に、クラス委員だった純子の他幹事が相談し、予定より1年早く繰り上げて2回目を開く事になったのである。
「ねえ純子。名簿を見ても良い?」翔子はテーブルの上に有った名簿をを手にして、開いて見た。
それは9年前に作った名簿で、所々が赤ペンで消され、新しい住所と電話番号が書かれていた。
翔子は木下の名前を探したが、実家の住所のままだった。
「ねえ翔子。木下君とは全然会ってないの?」純子はコーヒーを入れ、翔子が手土産に持って来たショートケーキを皿に載せて持って来た。「会ってないよ!全然」「そうなんだ。行方不明なんだよね彼。実家も引っ越した見たいで、電話が通じないし、困っているんだよね」

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