「あれ? 諒司は一緒じゃないんか、エリカちゃん」
「あ、何かねェ〜、ブレーキランプ切れてるからスタンドに寄ってからこっちに来るんだって」
「ほう… それでは、鬼のいぬ間に彼の秘密を教えてあげましょうか?」
「え、なになにぃ〜?秘密って」
品川恵利花の期待に満ちた表情を満足気に眺めた後、峠昭彦は、ニヤリと悪魔の様な笑みを浮かべて語り始める。
…但し、その顔つきほど悪辣(あくらつ)な内容ではなかったが。
「悪ィ、遅くなっちまったみたい……
エリカ、何だよそのキラキラした瞳は?」
「リョージってやっぱ、あたしが見込んだだけの事はあるんだぁ…」
「昭彦! お前、……バラしたな?」
「まぁ、隠す必要なんてないじゃありませんか」
いけしゃあしゃあとそう言った後、峠昭彦はエリカに笑顔を向けた。
「エリカさん、あなたも芸能界デビューする可能性が大いにありますね」
「昭彦…てめえ」
「諒司、おめーはよ、スカウトになってりゃ超一流だったんじゃねーの?」
「お前までそれを言うか、康介……」
俺、倉沢諒司の秘密とは…
「これまでにナンパした女の子全員が、芸能人になったヤツなんて聞いた事ないよね〜っ、あはは」
…とエリカがのたまう通り。
ある意味ラッキーとは言えるが、逆に大物を全て釣り逃がしたとも云える。
いずれにせよ、女性限定と注釈がつくにしろ、他人に運を与える点ではエリカといい勝負?……
むろん、俺が『女神様』って訳じゃないが…