僕は向かっている。
この脚で。上へ上へと。
うごめいている。躊躇と決心の二つが僕の中で。
これでいいの?
これでいいんだ・・・。
僕は脚を止めた。僕の前には一つの扉が立ち塞がっている。扉の向こうからは風の音が聞こえる。
ドアノブに手を掛けた。錆び付いた扉はキィと音を立てながら開いた。そこには、この世界のほんの一部、僕の生まれた町が広がっている。
「この世界になんてもう居る意味はない・・・。」
なんとなく僕は口にしてみた。
「ここが僕の、藤咲将来の最期の場所か・・・。まさかお気に入りの屋上で終わるなんて・・・。いやいや、いいんだよ。もう、どうだって・・・。」
僕はドサッっと倒れ空を見た。青くて、青くて、どこまで青くて・・・。もうこの空を、見ることは無いんだと思い、急に悲しくなってきた。
「こんな世界でも、心揺れるものはたくさんあるんだよなあ。」
僕はそれ以上考えなかった。思い出が邪魔するといけないから。悲しくなるから。
僕は立ち上がり、屋上のフェンスに手を掛けた。ここは、今は廃墟となった13階建てのビル。勿論、立入禁止の札はあったけど、気にしない、気にしない。下を見ると小さな人々や車が行き来している。
「小さいよなあ、人間なんて。さてとっ・・・。」
僕はフェンスをよじ登り、さっきいた反対側に立った。
「今までありがとう。そんでごめんなさい。」
バッと手を離そうとしたその時!。
「やっぱこえぇ。つか僕、高所恐怖症なんだよなあ。我慢してたけどいざとなるとビビっちゃうよ。とりあえず戻ろう。」
フェンスに手を掛けて元に戻った。
「とりあえず深呼吸、深呼吸っと。」
思い切り深呼吸していると!。
「ゲホッ・・・むせた・・ゲホッ・・ゲホッ。」
いちよう落ち着きまた空を見ていると、どこからか物音がした。
「やべっ、警備かな。」
すぐさま物陰に隠れた。キィと音が鳴った。そこを覗くとやっぱり人が立っている。でも警備員には見えない、しかも僕と同じくらいの年頃の女の子。(ちなみに僕は16歳ね。)
不思議に思って見ていると、その娘はこっちに向かって歩きだした。すぐさま僕は顔を引っ込めた。
「だ、誰なんだ!?しかも僕に気付いてる!?」
コツコツと足音が近づいてくる。