噂上等ノンフィクション?

ゆう  2009-01-10投稿
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彼は腕を押さえ、叫んだ。
「痛っっ!」

ドラマ等で見る程、血が出ていない。
ナイフが小さいからか?

もう一度!
もう一度!
もう一度!

「ガァァーッ!!」

叫ぶ彼。

私は、正気を失っていた。
「黙れやオッサン!いつなったら離婚すんねん!ハッキリしろや!」

「する!すぐにするから止めてくれ!」

本当は離婚なんて もう
どうでもよかった。
好きだけど憎かった。
いや、それは私の思い違いなのか。

ただ憎かった。
ただ彼の家庭を壊したかった。
自分中心にも程がある、生き方、考え方。
一緒に居られないなら死んでくれ。

でも その時は本当に、彼の事が好きで 愛していて ずっとずっとずっと
一緒に居たいと思っていたのは確かなんだ。


彼がその後、どうやって帰ったのか 覚えていない。 もちろんポケベルを鳴らしても連絡はつかない。
私は半月前、既にバイトしていた病院を辞めていた。彼と付き合ってるという噂が立ち始めたからだ。

彼の怪我が どういう具合なのか 知る術がなかった。 私が傷付けておきながら、心配だった。
怖い物無しになった筈なのに彼のマンションに行けなかった。とにかく、逢いたかった。

やっと連絡が取れた。

治療して貰った病院で、どう説明したのかは聞かなかったが、ちゃんと傷口も縫われ、包帯を肩から手首付近まで巻かれていた。さすがに嫌われたと思っていたが、彼は

「辛い思いさせてごめんな。」

逆に謝られた。

彼は、私の事をちゃんと考えてくれている。
彼は、奥さんや子供より私の方が大切なんだ。

私は馬鹿だ。

彼は 私とは全く正反対の事を考えていたのに。

数日後、生理が遅れている事に気付いた。

…妊娠だ。

でも、私は
「どうしよう」
と、思うより 嬉しかった。彼の子供が出来た。
絶対に産みたい。

薬局で買ってきた検査薬で妊娠の陽性反応が出た時、私は思わず 笑みをこぼした。
単純に嬉しかった。

子供が出来たと言えば、
彼はどんな顔をするだろう。
困った顔をするかな。
でも、絶対
「産んでもいいよ」
と、言ってくれる。

彼に言った。彼は優しく そして、残酷な言葉を口にした。

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