これで、俺以外全員が奏と握手を交わしたことになる。
ここで俺だけ握手しないってのは宜しくないよな…。
流れ的にも。
心情的にも。
「じゃ…」
コホンと咳払いをし俺も、奏に手を伸ばす。
「改めて宜しく頼むぜ――奏」
出来る限りの笑顔を浮かべて俺は言った。
「…はいっ」
彼女も笑顔を浮かべはその手に応えた。
――その笑みは昨日見た笑みよりずっと晴れやかでずっと笑顔らしかった。
「じゃ、私達はこれで」
「じゃあな、皆」
遼と怜がそう言って手を挙げ俺達から離れていった。
「じゃあねーっ!」
「じゃなぁ」
「ごきげんよう」
「…さよなら」
その後ろ姿にそう声を掛け俺達も自分達の家へと歩き出した。
「えへへぇ、かなちゃんかなちゃん♪」
「…わ、分かりましたから」
しきりに麻衣が奏の名前を連呼しそう呼び掛ける。
それに奏は困りながらも満更でも無さそうな顔をしていた。
微笑ましいなぁ、この光景。
「可愛らしいですね」
幸姉が笑顔のままそう話し掛けてきた。
「そうですね」
素直にそう答えた。
でも、麻衣よ。何度も何度もちゃん呼びしているが、一応その相手は年上だぞ。
目上だぞ?
…まあ、別に言いけど。