いいよな、別に。
それほど気にするべき事でもない。
それほど考えるべき事でもない。
それほど視たい事でもない。
それほど気付きたい事でもない。
まだ、理解したくないんだ、そんなこと。
「さあ、帰ろうぜ」
「?う、うん」
「…?」
二人はどうしたのかと顔を見合わせたが言いたくないことなら、と思い直したらしく何か喋ることもなく、先を歩く俺の後を付いてきた。
とにかく…家に帰りたい。
今の俺はただそれだけを考えていた。
――幸音サイド
「また明日…。ですか」
ふふふ、と幸音は哀しげな響きを持った笑い声を上げる。
「ふふ…よくそんな事を平気で口に出来たものですね…私は」
そう呟く幸音の表情にいつもの穏やかさは微塵も感じられなかった。
ホントに私は自分の意思と言うものは無いのでしょうかね。
「!――何を言ってるの私は…」
こうなりたいと思ったのは私。
こうならなきゃと想ったのも私。
「人形が意思を持ってどうするつもりですか…」
吐き捨てるようにそう呟いた後幸音は空を見上げた。
空はすでに日が沈み陰と陽が混合したかのような色と成り果てていた。
「仕方が…ないんです…」