「…なぁ」
「…はい」
「それ面白いかー?」
「…興味深い」
その返しは面白いと判断して良いのか?
「どんな内容なんだ?」
「読んでないのですか…?」
「途中挫折しました」
だって、フォード財団とか理論的帰結とか、何やらよく分かんない言葉が滝のように出てきたから…。
「…まだ読んでる途中なので」
終わったらお教えします、と言って奏は本に目を落とした。
「…」
寝よっかな。
何となく眠いし。
そうだな、ちょっとばかし寝るか。
そう思いながら俺は瞼を閉じた。
その時、下から俺を呼ぶ声が聞こえた。
麻衣だ。
「お兄ちゃーんっ!ちょっと来てーっ!」
「…何だーっ?」
階段越しの会話なので自然とお互い声が大きくなる。
かなりの近所迷惑だと思われる。
まあ、近所があればの話だが。
「手伝ってほしいことがあるのーっ」
「オーケーっ、ちょっと待ってろーっ!」
よっこらしょ、とベッドから起き上がり彼女に話し掛けた。
「ちょっと下行ってくるけど、お前はどうする?ここに残るか?それとも一緒に来るか?」
「行く…」
パタンと本を閉じ小脇に抱えノンビリと立ち上がった。
どうやら下に降りて読むらしい。