「ううん、もう無いよ。後、十分くらいで出来るからお兄ちゃん達はそこら辺に座ってて」
と言って麻衣は前を向いた。
「何か今日は豪勢だな。何か良いことでもあったのか?」
いつもにしてはずっと豪勢な料理だった。
少々豪華過ぎなんじゃないかと言うくらい。
「えへへ、今日は記念日だから。かなちゃん、名前決定記念っ」
嬉しそうな顔をしながら麻衣は言った。
「へぇ、成程。だとさ、良かったな」
「…」
彼女は俺の言葉にコクンと頷いた。
余程嬉しいのか顔を本で隠している。
照れてるのか?
そんな時だった。
コンコン。
「おわ?」
玄関から扉の叩く音が聞こえた。
誰か来たのか?
「お兄ちゃん出てー」
「応よー」
返事を返し俺は玄関へと向かった。
「ほーい」
カチャリと言う音と共に扉を開いた。
その先に居たのは…。
「よっ」
何と、瀬野先生だった。
え、何で?
「どうしたんですか、こんな時間に」
俺は若干驚きながらそう言った。
この人が家に来るのはちょっと、と言うかかなり珍しい事だ。
「ん、飯食わせにもらいに来た」
「…は?」
それは近いうちに、と言うことではなかったか?