夜中の2時。静かな夜。家の人間も、地域の人々も寝静まっている。
いつもの静かな夜。
しかし、それも、今夜で終わり。すべて、今夜消える。すべて終わりになる。
ガソリン1000リットル用意した。家の人間にもわからないように、家の周り、家の中の隅々まで撒いた。残りは俺の部屋に撒く。俺自身も頭からガソリンをかぶる。
準備は整った。あとは、安物のライターで火を点けるだけ。それで、終われる。俺自身も、親父も、おふくろも、この家も、終われる。
終われば、もう苦しみはない。世の中との関わりもなくなる。何かをする必要も、考える必要もなくなる。あとは生き残った人間たちが好き勝手やるだけ。死んだ人間にとっては無意味なことばかり。
すべて終わる。
そして俺はライターの火を点けた。
部屋は一瞬で火の海と化し、俺自身も火だるまになった。
熱い。苦しい。しかし、その苦しみを乗り切れば、すべての苦しみから解放される。薄れゆく意識で、そう思った…。
(この作品はフィクションです)