ちょうど城の真後ろくらいに差し掛かったところにドローが現れた。地下から出てきたところで、手にいっぱいの綺麗な宝を抱いていた。
パットは俺の息子と顔も年もそっくりだなとなんとなく感じていた。 「ドロー!何してるの!」
「こんな所にいたのか」
パットが振り向くとそこには追いかけてきたひとりの兵士の姿があった。
「やっぱりな。この盗人集団が!」
「これは違うんです!」
「話しても無駄だ。シャープ、お前はドローと一緒に逃げろ!」
パットは兵士と組み合いになった。
「ふざけんな!俺だって戦える」
「そんなこと分かっている。シャープを守れと言っているんだ」
「泥棒だー!誰か来てくれー!」
「さぁ、時間が無い。早く逃げろ」
「分かった。俺に任せとけ!おっさん」
ドローはシャープの手を掴むと一目散に地下へと入って行った。
地下の入り口は緩やかな坂だった。
「これはお城に通じてるんでしょ?」
「ああ、城の図書室に通じてるぜ」
地下の終わりは梯子だった。梯子は鉄でできていて、錆びついていた。相当古いものらしい。
「安心しろ。図書室には本を貸し出すボケちまったじいさんがひとりしか居ないから」
地下から出るとそこはなんと図書室のど真ん中だった。どこか虚しい黄昏時の光が窓から射していた。
「びっくりしたか?実はこの通路は国王の緊急時の時の避難通路なんだ」
ドローはそのまま堂々と図書室の出口へ足を運んだ。
「待ってよー」
ドローは普通の声量だがシャープは城にいる時は小声で話すことにした。
ドローに追いついた時左側見て愕然とした。本の貸出し係が受付に座っていたからだ。
「大丈夫。じいさんボケてるから。本番はこれからだ。国王に言わなきゃいけないことがあるんだろ?」
ドローは図書室の出口の戸に手をかけ、シャープを見た。
「うん。でも、会えるの?」
「合わせてやるよ。国王は玉座の間にいる」
ドローは戸を開けた、と同時に固まった。
「どうしたの?」
シャープがドローの後ろから覗くとそこは城の入り口であるエントランスだった。高すぎる程に高い天井にはシャンデリアが揺れ、左手には兵士に止められた門の内側がそびえ、右手には踊り場でふたつで分かれる大きな階段もあり、まさに華やかな場所だった。エントランスを埋め尽くすムシを除いては。