ピピが、落ちてゆく。私も、落ちてゆく。
もはやなにもかもがスローモーション。
ようやく、自分がほうきから落ちたと悟った私は、ピピを掴もうと手を伸ばした。でも…全然届かない。どうしよう。
刹那。
「柄のとこ。掴んで!」
そんな声がして、目の前に人が乗ったほうきがあった。
「え…」
「いいから、早く!」
せかされるまま、柄を掴んだ。ほうきは私の体重で、下へと急降下する。
地面が近くなって、私はその場にとんっ、と飛びおりた。
「……えっと」
助けてくれた人の顔を見て、私はびっくりした。
朝、私が下敷きにしてしまった人じゃん…!
驚いた私に、アニーとアリスが駆け寄る。
「びっくりしたよ!空中で人とぶつかるなんてっ!」
「全く…もうちょっと注意しなきゃ!」
「ごっ、ごめん…」
叱られて、小さくなる私。
しかし、その中に、助けてくれた男の子が割って入った。
「いや、僕がよそ見してたから…僕のせいで。すみません」
「いえっ!助けてくれて、ホント助かりました!」
ぶるんぶるん首を振る私を見て、おかしぃーとアリスが笑った。
「……およ?」
声がして、上をみると、男の子がふたり、ほうきに乗っていた。
「おまえ、アニー?」
そのひとりが、アニーを指さしながら、地面へおりる。
「……、あんたは、カイ?」
アニーも、男の子を指さしてそう言った。
え、知り合いなわけ?
普通にびっくりした。
それで、アニーにきこうと思ったら、
「へぇ〜知り合いなんだ?もしかして元カノとか、カイの?」
浮いている男の子に先をこされた。
カイという男の子は、ふん、と鼻をならして言う。
「んなわけねぇじゃん。単に」
「小学校が一緒だっただけ」
アニーが、後半の言葉を奪い取った。
ぴりぴりした感じのふたりを尻目に、アリスは私を向いて、
「ねっ、もう帰らない?人も来ちゃったし」
(自分から言ったくせに)帰ろうと提案した。
私はもう、落ちてから、やる気がなかったから、普通にうなづいた。ピピを掴む。
「全く…落とさないでよ」
私は苦笑いしながら、ふと後ろを見た。助けてくれた男の子がいた。
「あ…あの、朝はすいません」
慌ててまた頭をさげた。男の子は笑いながら、言う。
「いえいえ…僕、リーブっていいます。君は?」
「私、は…アミです」