「ほ、ほ、本当か?」
僕は何度も訊き返す。
「実は…」
嘘でした、と言うのを期待してしまう。
「実は、実話です」
「ふざけるなよ!」
僕の声が教室に響く。一瞬静まり返ったが、一瞬で騒がしくなった。
「なんだ吉川、やいてんのか?」
「そ、そ、そんなんじゃないってば」
「そ、そ、そんなんじゃないってば」
「真似するなよ」
「真似するなよ」
「僕は馬鹿です」
「だろうね。でも、吉川と一緒にしたら馬鹿に失礼だな」
朝、自分が松井に言ったようなことを横田に言われて悔しかった。
嫌な気分だからか、廊下がやけに騒がしい。坂本たちだろうか。不良は気にしないことにした。
「その手紙の内容はどんなんだよ」
「ラブレターと言ってくれたまえ」
僕は手紙を奪い取った。腹が立つ。
《今日の放課後、体育館の裏の桜の木の下で待ってます
必ず来てください
美優より》
絶望感が僕の胸から湧いてくるのがはっきりわかる。
今僕は体育館の裏にいる。
木の陰に隠れて桜の木の辺りを見張ることにしたのだ。
風がヒュルリと音をたてた。
それと同時に横田がやって来た。口笛まで吹いている。
美優ちゃんはまだだ。
「神様、何で横田と美優ちゃんなんだよ!」
僕は心の中で叫んだ。
何度も、何度も…。
ー続くー