「しんでしまうとは、なさけない」
勇者が目覚めると、そこには国王がいた。
「あ、国王さま。おひさしぶりです」
勇者は、懐かしさのあまり、目を潤ませる。
冒険の旅にでて、はや3ヶ月。
はじめての全滅だった。
「てめえ、お久しぶりですじゃねえよ! なに全滅してんだよ」
国王はすごい剣幕で、勇者を罵倒する。
「は、はい。あのう…そのう」
こんなに怒られるとは思わなかったので、勇者は驚いていた。
後ろを振り返ると、棺桶が3つ並んでいた。
「貴様らが全滅するたびに、いくらカネがかかると思っておるのだ。おい答えてみろ!」
「ええと。たぶん、いっぱい…」
「ふざけるな!」
怒り狂った国王は、勇者に向かってガラス製の灰皿を投げた。
「ぷばぶぴっ」
勇者に47のダメージ。
「ひ、ひぃー。たすけてー」
流血しながら、勇者が叫ぶ。
「土下座して反省しろ!」
続けて、国王は、勇者にカカト落としをくらわせる。
「どぷぺぴょ!」
勇者に62のダメージ。
「やめろ!」
その声は、棺桶の中から聞こえてきた。
「黙って聞いてりゃあ、調子に乗りやがって」
棺桶のフタがズリ落ちて、戦士が起き上がった。
「おい、オッサン」
「お、お、オッサンだと。わ、我輩に向かって、オッサンとは何事だ!」
思わぬ暴言に、国王が取り乱す。
「豚め! 国王の姿を装った、このオス豚め!」
別の棺桶からは、神官が出てきた。
「ちょっと、あんた! あたし達が本気だしたら、こんな城、半日で壊滅できるんだからね」
家事手伝いの少女が、ハッタリをかます。いちおう「魔法使い」という事になっているので、効果は絶大である。
「なあ、オッサン。ひと暴れしてやろうか?」
戦士が、腰に帯びた「剣」を鞘から抜いてみせる。
「そういえば、この城には秘蔵の武器庫があるはずです」
知恵者の神官が、略奪をほのめかす。
「王女さまのクローゼットって、たしか4階にありましたよね?」
家事手伝いの少女が、きらびやかな衣装に胸をときめかせる。
「あ、わ、悪かった。わしが悪かった。すまん。すまんかったね」
勇者たちの常人離れした武力を恐れた国王が、態度を軟化させた。
「もうしわけございません、だろ?」
その後、3時間にわたり、勇者たちの「国王イジメ」は続いた。