すぐにモグレ警部は、正門付近で待機している警察官たちに指示を出した。
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「ルーク、本当に顔色悪いぜ」
近くのベンチにグッタリ腰掛けるルークを見て、ジョージは心配する。
「大丈夫だよ」
相変わらず、何もない事を強調するが…
ジョージには、ルークの異変に気づいていた。
ふと、今の状況が頭によぎったジョージは質問してみた。
「もしかして、人形の事で何か悩んでいるんじゃないか?」
「な、何もないよ」
「正直に言えよ」
「正直に言ってる」
溜め息付くジョージ。
「なあルーク、君が隠し事したって僕を誤魔化せないんだぜ」
「何が言いたい?」
「僕には分かるんだ。
君の…
どこか、落ち着きのない表情。誰かに対する怒りの眼差し。まるで…
何者かに、誘惑されているみたいだ」
「だーかーら!」
「ルーク!」
「…」
「何者かに、誘惑されているんだろう?」
しょうがねえなと言う態度でルークは言う。
「エリザベスだ」
「エリザベスが、どうかしたのか?」
「さっきから、俺の耳にエリザベスの声が聞こえて来るんだ。
まるで…、耳元にささやくようにね」
「僕には聞こえない」
「聞こえるのは俺だけかもしれない」
「人形は何て、言ってるんだ?」
「私を助けてとか、今でも愛してるとかね」
思わず、背筋がゾッとなるジョージ。
「何てこった。化け物人形に惚れられてしまったのかァ!」
「一時期は、俺をも殺そうしたのに」
「今でも、愛する気持ちは変わっていなかった」
「こっちはホント、イイ迷惑だよ」
「その気持ちは、よく分かるよ」
「どうしてなんだ?」
「何が?」
「今まで、エリザベスの声が遠くから聞こえて来る事なんてなかったのに。妙だ」
「きっと、ローズマリーのせいだな」
「ローズマリーが?」