京谷さんが去って行った後、
まだ泣いている青山さんと、
その横に立つ成沢さんの姿に、
あたしは、
自分がまだ、この状況を十分に理解出来ていないコトに気付いた。
だって、
そもそも、“クサ”とかって言葉が、
青山さんと成沢さんの会話の中で飛び交っていた時点で、
あたしには、
全く意味が分からなかったし。
でも、
青山さんから煙草を腕に押し付けられそうになったトキの、
ミズホさんの登場にはビックリしたな。
なんか、
全然、頭の整理がつかなくて、
まだ、放心状態のあたし。
『おい、青山。
男遊びも大概にしとけよ?!
どうよ?!
本気で惚れた男に逃げられた気分は?!
ま、自業自得ってトコだよな?!』
まだ泣いている青山さんに向かって、
聖人が言った。
そして、
ミズホさんも聖人に続けて、こう言ってくれたんだ。
『あんた達が“クサ”の栽培をやってるコト、
もし、学校や大人達にバレたらマジやばいよ?!
あたしも聖人も、
今回だけは目をつむってやるからサ。
そのかわり、奈央と秋田谷には、
今後一切手ェ出すなよ?!
この2人にもし、何かしたら、
あたしも聖人も、
あんた達を許さないよ?!
分かったね?!』
青山さんも成沢さんも、
最後までうつむいて、小さくなっていた。
『そろそろ引き上げねぇと、ヤバイぜ?!ミズホ。』
『そうね。
青山に成沢。あんた達も、もう行きな。』
ミズホさんが、そう言うと、
青山さんと成沢さんは、
たどたどしい足取りで、この場から立ち去った。