あれから2日。
お互い違うルートの近道を行っていたが、どうやら馬だった分シーラより早く着いたらしい。
「おいランス。」
ラウフが隣で小さく言った。
「もう、シーラの手を離すんじゃねえぞ。」
「分かってる。」
サントラーセットの時も、キジルの時も、去り行く彼女を引き止める事が出来なかった。
手を、離してしまった。
母さんの事で、あいつが自分を責める必要なんてなかった。
それを、オレはあいつを責めちまった。だから、オレはあいつに謝らなきゃならない。
謝って、それから言わなくちゃならない。
『もう、自分を責めなくていい』って。
「行くか。」
「レミス爺!いるかい!?」
シドマが叫びながら小屋の戸を大きく開けた。
「なんじゃい、シドマ。」
小屋の奥の方から老人の声が聞こえてきた。
「入るよ。
…レミス爺、手紙とお客だよ。」
部屋の奥から姿を現したのは白い髭をたっぷりと蓄え色黒の肌が皺でいっぱいの鍛冶屋らしき老人だった。「……なんじゃ、お前たちは。わしに用か。」
目を三角にしてランスォールたちを睨む。
他人を拒絶するような瞳が、なんだか妙に気になった。