体育館の壁とネズミ色の高いフェンスの間に僕たちはいる。
僕と横田と坂本、奇妙な組み合わせだ。
「吉川、てめえずっと見張ってたのか?」
耳にピアスをした坂本が怒鳴る。
バレたからには、僕はやけくそになることにした。
「まあね。誰かさんが殺すとか何とか、ごちゃごちゃうるさいから」
僕は少しビビりながらも強気で言い放つ。
「てめえ、誰に口きいてんだ?ああ!?」
「不良なんてゴミくずだよ、ゴミくず」
「何だと?」
「あっ、しまった。ゴミくずに失礼だった」
「てめえ、ふざけてんのか」
「ごめんなさい、ゴミくずさん」
(おらぁ!)
(うぅっ…!)
鈍い音が耳に染みる、と同時に頬に激しい痛みを感じた。
僕はバランスを崩し、その場に倒れ込んだ。
血の味が口中に広がる。
「覚悟しろ!ぶっ殺してやる!」
坂本はどこからか果物ナイフを取り出した。
気付けば、いつの間にか横田はいなかった。
「ぼ、僕を殺す前に、何で僕を殺したいのか、お、教えてよ…」
僕は力を振り絞る。
「美優だよ」
「み、美優ちゃんがどうしたんだよ」
「てめえさえ居なければ、美優は俺のもんなんだよ!」
坂本は狂ったように叫び、僕にナイフの先を向けてきた。
僕はあまりの恐怖に身動きができない。
神様、助けて!
(バウぅぅぅ!!)
そこで、犬の声が大きく響いた。
フェンスの外側に、柴犬が立っているのが、見える。
ー続くー