何歳(いくつ)になっても(8)

内田俊章  2009-01-14投稿
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翔子は、賢介と付き合っていた頃の事を思い返していた。
最後に会ったのは、成人式の日で、賢介は半年振りの帰郷だった。成人式の後、2人は友人と別れ、久し振りのデートを楽しんだ。「ねえ、この次は何時会える?GW?それとも夏休み?」賢介は少し考えながら言った。「今年は3年生だろう。GWはビッシリ野球の合宿だし、夏休みは試合が続くんだよな〜」「う〜ん、そうなんだ。それじゃあ、GWに私が東京へ行くよ!夜なら時間が取れるでしょ」「それがダメなんだ!合宿中は、夜も外出禁止なんだよ」賢介は、翔子への思いが覚めた訳では、決してなかった。ただ、プロになりたいと真剣に考えていて、野球に専念したいと言う思いの方が強かった。翔子は、そんな賢介の夢を、痛いほど理解していたが、女心として、少しでも一緒にいたいと言う思いは、どうしようもなかった。「それじゃあ、又手紙を書くから、返事を頂戴よ!」「うん、分かった」その日二人は、久し振りにホテルで夜を過ごした。
「え〜皆さん、宴もたけなわですが、そろそろ時間ですので、ここで『万歳三唱』をして、閉めたいと思います。尚、二次会を用意して有りますので、尽きないお話の続きは、そちらでお願いします」
会場を出た皆は、少し離れたビルの地下にある、スナックへと入って行った。クラス会に出席した35人全員が入ったため、ボックス席は一杯となり、翔子は賢介と並んでカウンターに席を取った。ここでも又、賑やかな話し声や笑い声が響き始めた。
「ねえ、只野さん…」「えっ、え〜!何だよ突然。そんな呼び方するなよ!」「だって、『只野さん』って呼ぶ練習をしなきゃ、家族の前で、間違って『賢介』なんて呼んだら、大変でしょう!」「そりゃ〜、そうだけど……、今日は『賢介』で通してくれよ!」「若し間違ったら、殺される?」「又そんな事を言う。うちの女房がそんな人間に見えるのか?」「冗談よ、冗談!」「でもな、少し気が強いと言うか、プライドが高いと言うか……。でも全部、母親譲りなんだ」「大会社の社長夫人だもの、それなりの気使いは必要だよね」「俺は婿さんだろう。だから娘には『余りペラペラと家庭内の事話すな』と、釘を刺されているんだ。俺の立場も有るからってな!」「何かそんな感じだね。私なら務まらないな!きっと」「まあ、普通の家庭なら、そんな気を付かう必要ないしな」「窮屈じゃない?」「もう慣れたよ」



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