「皆さん今晩はーっ、爆音集団ラットラーです。
今夜は新メンバーになってから初のライブになりまーす」
峠昭彦の挨拶が始まる。
俺、倉沢諒司は打ち合せ通り、エリカの方にマイクを向けて紹介する。
「そんじゃ、いくぜ!ドラム、品川恵利花!」
ズダダダダッ!とスネアが乱打され、ジャーン!とシンバルが鳴った後は、他のメンバー紹介へと続く。
エフェクターのスイッチをポンとけり込んだ石島康介が、ギュワワーッとドライブを効かせ得意のリフを響かせていた。
「じゃ、いつもの一発目いくぞっ 1・2・3・そりゃーっ!!」
ズッドーン!と景気良くオープニング曲の《サンダー・ストーム》が、いつも通りに始まっていた。
「ふん…… ガキのお遊びかと思ってたが」
ライブ会場にそぐわない、ダークスーツ姿の男が冷ややかな笑みを浮かべていた。
「演奏プロ級、ルックスも…並み以上か」
やがて、薄笑いは影を潜め、徐々に真剣な顔つきに変わっていった。
(こいつら……売れる)
男はスタジオの管理人、村岡大悟から『モノになりそうな奴らがいる』と聞かされていた。
その為、多忙な中わざわざこんな場末のライブ会場まで足を運んだ訳である。
「どうやら、無駄足じゃなかった様だ」
数年ぶりに出会ったダイヤの原石…
スーツの男、霧島敬二郎は、全身の血液がふつふつと熱くたぎっていくのを感じていた。
第一部・完