「それで、奥さんとは恋愛結婚なの?」「一応な。付き合ったのは2年位かな。俺達は同じ大学出身で同じ年なんだ。でも学生時代は、お互いに全然知らないんだ。卒業して今の会社に入社して、3年目の正月に、先輩に連れられて社長の所へ年始の挨拶に行ったんだ。そこで初めて会ったんだよ」「そこで一目惚れした?それとも、された?」「どっちでもない。俺は社長に気に入られたみたいなんだ。彼女はその時、付き合っている人がいたし…。でも親はその交際には反対で、別の交際相手を探していたらしい」「そして、その白羽の矢が、賢介に当たった、と言う事?」「そう言う事らしいな」
「俺の事ばかり聞いて、翔子はどうなのよ?旦那の仕事は?」「うちは銀行マン!」「そうか、それじゃ、職場結婚か?『オフィスラブ』ってやつだな!」「そんな格好良い物じゃない!賢介と連絡が付かなくなって、毎日暗い顔をしていたみたいで…。そんな時に、主人に声を掛けられたの」「そうか。あの頃は、野球一筋だったからなあ。東京代表になって、全国大会迄行ったけど、一回戦で負けてしまった」「うん、覚えてる。テレビで見てたも!だから、そろそろ連絡が来るかな、って思ってたけど、来なかった!」「分かったよ、もうそれ以上言わないでくれ!」
「そう言えば、うちの主人って賢介と同じ大学出身なんだよ!」「そうなのか?3才上だったな?と言う事は、俺が1年の時に4年生だ。何処かで会ってるかもな!」「世間って、広いようで狭いね」「そうだな」翔子は、話ばかりをして、かなり酔いが回って来た。
「お二人さん、盛り上がってる?」純子が二人の所へやって来て、小声で行った。「今夜は18年振りの愛を確かめるんでしょ?」「何だよ、それ?」「あれえ、翔子、まだ話してないの?」翔子は、顔を赤くして横を向いた。「どう言う事だよ、純子」「あのね、今日は『ひょっとしたら、ひょっとする』からその時は、私と一緒に居た事にしてね、って頼まれたの」「お前たち……、年を考えろよ!」「年なんて関係ないでしょう!」そう言って翔子は、賢介の胸を叩いた。「そうだよ賢介。翔子はね、ずう〜と賢介を忘れられずにいたんだよ!あの成人式の頃から、何回私の所へ来て泣いたか、あんた知らないでしょう!」賢介は黙ってしまった。