『もしもし、ちょっと聞いてよぉぉぉ。また勇樹が・・・ひどいんだよっ。もう・・・』
彼女の声はもう言葉になっていない。涙声と周りの音で聞き取れない。しかし、里埜は状態が分かっていた。何回、電話しても出ない亜衣の事で勇樹から電話があったからだ。二人が喧嘩するといつもこんな状態だ。もういい加減にして欲しい。しかし、紹介した手前仲介役になっている。
『亜衣。勇樹も悪かったって言ってるよ。本当に悪かったって。しかも、誤解だって』
『あっ、里埜は勇樹の味方するんだ。もう知らない』
冷たい電子音が流れる・・・こういう状態になると亜衣はいつもこうだ。呆れた感じで電話を机に置く里埜。幼稚園からの付き合いの二人だからあまり心配はしてないのだろう。