空は夕暮れ。西の空に一番星を見つけた。
俺は空を見上げて白い息をついた。
「これで本当にお別れか‥」
周りのヤツに聞こえないように呟いた。
〜1年前〜
俺は完全に舞い上がっていた。
サッカーボールを当てられているのに天にも昇る思いだった。
ずっと片想いだった月原ユキが俺の彼女だなんて信じられない。
数日前、体育の時間に月原さんにバスケットボールをぶつけてしまったときは本当に嫌われたと思った。
「おい、マサ!月原ユキと付き合ってんのか!?」
「あの月原さんか!?」
「ぬけがけすんなよ〜」
俺は有頂天になっていた。
「あの月原さんが俺の彼女‥‥」
そう口にするとますます実感が湧いてきて笑いが出てくる。
月原さんの姿を探すと、遠くでどこぞの女子たちと話ながら帰っているのが見えた。
月原ユキは学年の男子の中では『高嶺の花ランキング』上位者だった。
背がスラッとしていて色白で黒髪はツヤツヤしていて肩より少し短いくらいだ。
教室でギャーギャー騒ぐ女子とは少し違うオーラが出ている。俺は入学してすぐに一目惚れしていた。
その子が自分の彼女だなんて夢のようだ。
「頑張ろう、俺‥」