刹那、切り開いた場所から血が火山のように噴き出し、数秒間辺りに血の雨が降り注いだ。
「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」
俺は降り注ぐそれを避けようともせずに受け続けた。
服がそれを吸い段々と赤く着色されていく。
「よっ…し…」
仇が…討てた…。
悦びで笑いが溢れそうだった。
だが、そこで最悪なことに気付いた。
こいつは奏を連れていった。
なのに、こいつの周囲に奏は居ない。
なら、こいつは奏を何処かに隠しているはず。
「しまっ…た」
つまり、こいつを殺したことで奏を探すことが出来なくなってしまったっ。
慌てて俺は、地面に転がっている奴、いや、コートを調べ始めた。
何か、奏を探す手掛かりになるものがないかと思いながら。
だが、そうして奴のコートを漁っているうちに俺はあることに気付いた。
そして、恐怖で凍りついた。
「何だよ…これ…」
奴は…さっきまで動いていた。
俺を殺そうと動作をしていた。
あの、動き方はどう考えても人間だった。
なのに、そこに居たのは…。そこで倒れていたのは…
「人…形…?」
それは精巧に作られた人形だった。
いや、人形と言うよりマネキンと言った方がずっと正しいだろう。