海に浮かぶその小さな島は、地図にも載っていないのだという。
カナが驚いた様子を見せると、よくあることだよとレイが言った。
碇を下ろして減速し、船を砂浜に乗り上げて止めた。どうして乗り上げたのかと聞けば、波に持っていかれにくくするためだと返された。
レイは本当に知識豊富だ。
いよいよ上陸というとき、タームとニルバがみんなを集め、島での役割と目的を話した。
「ユーラはムンとジャングルに入ってくれ。ムン、前みたいに食料を追いすぎて魔獣の縄張りに入るなんてのはするなよ」
そう言われて、早くも釣竿の準備をしていたムンは照れ笑いをして鼻をかいた。
「いいか。セカ島は無人島だ。迷ったら捜すのが面倒だ。はぐれるな」
ニルバが全員を−−特にシークたち4人を見回して言った。
ワイルドな遠足みたいだなあと思っていたら、カナが上の空なのに気づいたように、解散した後、ニルバが声をかけてきた。
「おい」
「わっ、はい」
カナはびくりとしてニルバを見た。ぼうっとしていたせいもあるが、ニルバから声をかけられたのはホテル以来だったから驚いたのだ。
「タームから離れるな」
「えっ?」
「レイからも離れるな」
「へっ?」
それだけ言うと、ニルバは機関室に行ってしまった。
お前を1人にしておくと、後々面倒くさそうだから。
言外にそう言われた気がした。カナは少しうつむいて、そしてレイが呼ぶ声に顔を上げた。
「こっち来ないでー!」
カナは逃げている。
「よ、寄るな!」
レイも逃げている。
シークたちが、ゲテモノと呼ぶにふさわしい魚を釣っては2人に見せて驚かせていた。カナに至っては半泣きだ。
タームが木材確保のために小さな細い木を切り倒しながら、その様子を見ては1人笑っていた。