カナたちは走り疲れ、シークたちは笑い疲れていた。
しかし静かになったと思ったら、4人はジャングルに入ろうと誘ってきたのだ。
ダメに決まってんだろ、とレイが言うと、ウークが口をとがらせた。
「ディーシャはユーラたちについてったじゃないか」
「何で俺たちはダメなんだよ」
「そんなの不公平だっ」
「不公平だっ」
口々に文句をたれる4人に、カナとレイは顔を見合わせた。
ディーシャは科学に使える何か新しいものはないかと、ユーラ、ムンとジャングルに入っていた。
4人より3つも年下のディーシャがジャングルに行ってしまったのは、確かになっとくできないかもしれない。
「ニルバに聞いてみろよ」
レイが言うと、4人は揃って顔をしかめた。
「ニルバはぜぇったいダメって言うもん」
「タームは何でも許すのに」
「前、迷子になっただろって言うぜ」
「迷子のムンを探しただけなのにな」
こう4人セットで言われると、説得力というか迫力が出てくるから困る。
まだまだ言い募るつもりらしい彼等だったが、口を開いたまま停止した。カナとレイも。
ジャングルから聞こえた音のせいだ。
甲高い、人工的にも思える音。それは1度聞こえたきりで、後にはニルバが船から降りて砂浜を歩く足音だけがあった。
タームを見れば、木を切っていたナイフ(魔法のナイフなんだろうとカナは思っている)をぴらぴら振りながらジャングルを見ている。
「何か、あったのかな」
いつの間にか掴んでいたレイの服の裾を放してカナが言った。
だれもが知りたくて、だれもが知らない質問だ。
「見てくるから、船に戻ってろ」
ニルバがそう言うと、シークたちがその後ろについていき、タームが2人のえりを後ろからひょいっとつまんだ。まるで大きな猫だ。
前を歩いていた2人は、ニルバが頭を軽くはたいて止めた。
慣れた動作に見えたから、シークたちのああいうちょこまかした動きはよくあることらしい。
4人が文句を言おうと口を開いたとき、ジャングルの奥から声がした。ユーラだった。