「それにしても、あのムシの群れは何だったの?」
シャープは思い出したようにドローに訊いた。
「俺に訊くな。それより、あの氷はそんなに長くは持たないんだろ?」
「うん」
「だったらさっさとこの部屋も出ないとな」
ドローは床の絨毯を剥がした。その床には蓋が設置されていた。
「また地面に降りるの」
シャープはうんざりしていた。
「この城には面白い仕掛けがたくさんある。この地下牢へ続く道もそのひとつだ」
ドローは床にしゃがみこんだ」
「この部屋には三つの扉がある。ひとつはその氷で被われた扉」
シャープの後ろの扉を指さした。
「二つ目はエントランスへ続く扉。でも、そこにはムシの大群がいるだろう」
ドローは左側に取り付けられた扉を指さした。
「最後は地下牢へ続くこの床蓋だ」
ドローは重そうな床蓋を開けた。
「どの扉を進むかは自由だけどな」
シャープたちはドローを先頭に真っ暗な道を松明を片手に進んでいた。
「着いたぞ」
地下牢は薄暗く、遠くを見通すことはできなかった。
「たくさん牢屋がある」
シャープたちは左右に長く続く一本の道の上に立っていた。その道には鉄格子でできた牢屋が立ち並んでいた。
見ているだけで身震いする。
「どうしてこんなにたくさんの牢屋があるの?」
確かにこの牢屋は数が多すぎる、なぜなら中には誰も入っていないからだ。
「どうして誰も入っていないのにこんなにたくさんの牢屋があるの?」
「そんなこと知ったことか。さぁ、早く行くぞ」
ドローが進もうとした時だった。
「助けてー!誰かー!」
右手の暗闇の中から少女とそれを追いかける二人の兵士と三匹のムシが現れた。
「どうして兵士とムシが女の子を追いかけてるの!」
シャープが困惑している間に今度は左手の方から
ムシが現れた。エントランスのムシが追いついてきたようだ。
「あの兵士と一緒にムシと戦おう」
「待って!おかしいと思わない?兵士とムシが女の子を追いかけてるのよ」
ドローは右の闇をよく見つめた。
「本当だ。どうなってるんだ!」
ドローはとっさに判断した。
「右の方がましだ。右へ行くぞ」
ドローたちは少女の方へ駆け出した。
兵士たちはドローたちに気づいたようだ。兵士はムシに命令するとムシは一気にスピードを上げてドローたちに向かってきた。