《ママ!たすけて!......ママ―!》
いつからだろう..私が私じゃなくなってる
...夢?..そう、きっと夢なのね..
私は永い夢をみてるんだわ....
私が見てるのは現実なんかじゃない!すべて...そう..私じゃない....
《わたしじゃ..ない》
...
女は緑色の液体が入っているピストル型の注射器を肩に押し付けた。
プシュ―――ッ
打ち込んだ
女「ふぅ――――ッ!あぁしんど!」
グラマラスな裸体の女
その女は立ち上がって黒のレザースーツを身につけはじめた。
女《シかぁ〜し!...あんのジジイめ!..死にたくナいからサ!...
ハやくナオシテくれってンダぁ〜わサ!》
数年前
【p&L社 地下室】
四方がガラス張りの一室
様々な機材が並んだそこは、病院の集中治療室の様である。
中央に置かれているベッドに横たわる若い女
ベッドを取り囲んでいる白衣姿の男達
ガラスの壁の向こう側では、その手術の一部始終をモニターで見ていた初老の男。
高野恵蔵
高野「終わったか?」
マイクに向かって話す高野
白衣の男「成功です」
高野「おおそうか!..それはよかったご苦労であった」
モニタ―に映し出された女を見つめながら話を続ける高野恵蔵
「それじゃあ何も覚えていないんだな....
記憶を消したんだな」
白衣の男「しかし記憶を全て消してしまうと精神が安定しなくなります」
白衣の男を今度は肉眼で見る高野恵蔵
高野「ん?安定しないとはどう言うことだ」
高野を見る白衣の男
「情緒不安定からくる苛立ちや被害妄想、
自己防衛の為の攻撃性又は幼児後退....
時には幻覚まで..
しかしそれらを自らが制御をしようとした場合はいずれ...
精神が崩壊してしまうでしょう」
高野「つまりは廃人」
白衣の男「はい」
高野「!」
「意識が戻ったようだな」
長い黒髪にエキゾチックな顔立ちのその女は、
永い眠りからでも醒めるかのように
静かに眼を開いた。
女「う..ぅ〜ん..」