第12話
翔子は目を覚ました。亜弥は、台所で目玉焼きを作り、隼人はトーストにバターを塗っていた。「お母さん、お早う!目が覚めた?」「お早う、亜弥、隼人!」そして振り向くと、俊章が食卓で新聞を広げていた。「お父さん、お早う。ごめんなさいね、朝帰りで」「たまには、良いさ!お母さんにとっては、20年振りのクラス会だ。皆、懐かしかっただろう!」「うん、皆オジサン、オバサンになってたわ!自分もだけどね」
「ねえお母さん。今日は一緒に買い物に行く約束だけど、大丈夫?」「ああ、そうだったわね、大丈夫よ!でも午後からで良い?」今日は、家族で買い物に出かける予定だった。すると隼人は「僕は行かないよ!」と言い出した。「あら、どうしたの?一番楽しみにしていたに?」「幸介君のお父さんが、野球の練習をしてくれるんだ!」隼人は、嬉しそうに言った。翔子は思った。(賢介が…?。昨日は何も言ってなかったな)
3人は買い物を終え、坂の下のバス停で、バスを降りた。その近くには、大きな運動公園が有った。
3人が歩き始めると「お父さん、お母さん!」と隼人の声が聞こえた。振り向くと、隼人が賢介親子とキャッチボールをしていた。その近くには、賢介の妻が赤ん坊を抱いて、ベンチに座っていた。翔子と俊章は、賢介夫婦に、軽く会釈をした。すると亜弥が「お母さん、赤ちゃんを見て来ようよ」と翔子の手を引っ張った。「そうね」と言って、翔子と亜弥は公園へ入ろうとした。すると俊章は「俺は先に帰ってるゾ」と言って歩き始めた。「えっ?隼人がお世話になっているのに、挨拶しなくて良いの?」「お母さんが、礼をしておいてくれ!俺は見たいテレビがあるから」そう言うと、振り向く事もなく、行ってしまった。「変なお父さんね」と言いなが二人は、只野の妻の側まで来た。
「遥ちゃんでしたよね。もう1ヶ月位ですね」「ええ、明日で1ヶ月です」「わあ〜、可愛い!ねえ、お母さん」「本当〜ね」「亜弥ちゃん、抱いて見る?」「ええっ、良いですか?」「ええ、良いわよ」亜弥は、恐れる恐れる赤ん坊を抱いた。「亜弥、気を付けてよ!首が未だ座ってないんだから」「お母さん、私も妹が欲しいなあ」「何を言ってるの。隼人と同じ事を言って。うちは、もう無理よ!」翔子と只野の妻は、顔を見合わせて一緒に笑った。