彼が唄い終ると自然と涙が溢れ出ていた。さっきまでの涙とはあきらかに違う。泣いてる姿を見られない様に持っていた傘を彼に渡して駅へと走った。
歩道橋を駆け上り駅の入り口まで来た時、後ろを振り返り彼の姿を見た。彼は私に手渡された傘を持ってさっきの場所で佇んでいる。
『最高の誕生日プレゼントをありがとっ〜傘はプレゼントのお礼ぃぃ。君、名前はぁぁぁ〜?』
あたしの大声に気がつきこちらを振り返る彼。
『永遠(とわ)〜とわです。あなたはぁ〜?』
『あたしは、亜衣。今日で18歳になったばかり。また歌聞かせてね〜バイバイっ』
と大きく手を振り笑顔で駅の中に入っていく彼女。手には彼女から渡されたコンビニの傘を持ったまま永遠は佇んでいた。
その時、永遠は不思議な感覚に襲われていた。いままで誰かの為に歌を唄ったのはなく、これが初めての出来事だった。
そして、この出来事が後に永遠と亜衣を変えていく。