1-? 春の墓
純の頭は,まだ上がらない。
女は,やっと探した言葉で言った。
『あなたが初めてです。真剣に,私の話を聞いてくれたのは‥。
しかも理解までしようとしてくれて‥。
私は,それだけで充分ですよ。』
『理解,しました。』
純は顔を上げ真っ直ぐに女を見た。
『存在する命,そして,あなたが優しさに溢れる人だって事。』
純は微笑んだ。
『これでも,私は理解が早い方なんです。』
女はこの若い男に度肝を抜かれた様な気がした。
この人の言動,一つ一つに驚かされてばかりだ。
今,目の前に居るこの不思議な男を,
女は目を丸くして見ていた。
●○続く●○