凍える程に寒い夜。
空は真っ黒に染まり、星々の輝きは見えない。
純白を敷き詰められた大地との見事なコントラスト生み出していた。
吐く息は白く、淡い。
静寂の中、独りで待ち続けていた。冷たい風が運ぶ獣の匂い。いや、血の臭い
だろう。
小さな音がする。
雪を踏む音だろう、だが遠くだ。
音は近付いて来る。
違う音も聞こえる。
咀嚼音に似ている。
黒い影が見える。
ゆっくりと近付いて来る。
私はそれを待っていた。
私は狂喜した。
声にならない絶叫と同時にそれに向かって駆け出した。
それは優しく微笑んだ。
―おかえり―\r
両腕を広げ、私を受け入れた。
赤い花は白地に映える。
私は真っ直ぐに心臓を貫いた。それ私を抱いたまま大地に崩れ落ちる。
私はそれを喰らった。
骨までも貪る。
喰らい尽くして私は鬼となった。私の体から獣の、血の匂いがする。
たまらない。
たまらないほど、甘美な一時を感じていた。
―ただいま―