校門を出て二人で並んで歩く。
3学期の通信簿がどうだったとか、友達から仕入れたおもしろ話をして沈黙にならないように俺はしゃべりまくった。
月原さんは俺のくだらない話に笑ってくれた。少し下を向いて口を隠して笑う仕草がまた可愛くて、もっと笑わせたくなる。
話のネタも尽きてきたころ俺は意を決して言ってみた。
「あのさ、みんな月原さんのこと『ユキちゃん』って呼んでるやん?…俺も呼んでいい?」
恐々隣にいる月原さんを見ると、少し驚いたあと頷いた。
「…じゃあ、私は『マサノブくん』って呼んでいい?」
別れ道でバイバイした後、俺はユキちゃんの「マサノブくん」と呼んだ声を何度も思い出しては小さくガッツポーズをした。
「あ〜俺幸せだ…。3年になったら同じクラスになんねーかな〜」
リビングでテレビを観ながら大きな独り言を言うと、姉ちゃんに「あんたちょっとうるさいんだけど…」と言われて頭を叩かれた。
その拍子に重大なことを思い出した。
春休みにユキちゃんと遊ぶ約束するの忘れた!の前に電話番号すら聞いてない!
「しまったッ!!」
大声を出すとまた姉ちゃんに叩かれた。