何歳(いくつ)になっても(14)

内田俊章  2009-01-20投稿
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第14話

二人は、喫茶店へ向かって歩いたが、いつもと違い、言葉少なだった。純子は翔子に気を使い、翔子は翔子で(もし、本当だったらどうしょう?)と、気が気でなかった。
喫茶店の向かいに、テラスのあるファミリーレストランがあって、二人は、そのテラスの隅の方の席に着いた。
「あっ、お父さんだ!」4時過ぎに、俊章が喫茶店に入って行った。営業カバンを持ち、商談だ、休憩だと言っても、誰も疑わない格好である。その後に、何人もの男女が入って行ったが、俊章と同じテーブルに着く者はいなかった。
15分位経った頃、一人の女性が入って行った。帽子を深く被っているので、顔は良く分からないが、どこかで見たことのある雰囲気を感じた。「あの人よ」と純子が言った。その女性は、一番奥の席にいる俊章の方に向かって行った。翔子と純子はその女性をずう〜と目で追った。そして、俊章の側に立ち止まると、その向かいに座った。「あっ、座った!」翔子と純子は、同時に声を上げた。そして彼女は帽子を脱いだ。次の瞬間翔子は、目を丸くして言葉を失った。「えっ、どうしたの翔子!知っている人? ねえ翔子!誰なのよ?」しばらく間があって、翔子が口を開いた。「賢介の奥さん!」「えっ、賢介の?本当に?」翔子はテーブルに両手を着いて、険しい表情で立ち上がった。「どうして、あの人がうちの人と?」純子は慌てた。「翔子!落ち着いて!今はダメ!座って!ねえ座って!」純子は翔子の両肩を押さえ、座らせた。翔子の肩は、怒りで振るえていた。「未だ、浮気と決った訳じゃないんだから!」翔子は、色々と考えてみた。(いつからなのよ?うちの人とは、どう言う関係なの?)翔子は怒りが治まらなかった。
「賢介のところは、赤ちゃんが生まれたばかりじゃなかった?」「そうだよ、未だ1ヶ月だよ」「それじゃあ、こんな時間に外出して、誰が赤ちゃんを見てるのよ?」「実家の母親が、ちょこちょこ来てるみたい」「親に任せて逢い引き?」「どうかしてるよ!あの人!」
15分位で、俊章たちは席を立って店を出た。そして別々の方角へ歩いて行った。
純子は翔子に忠告した。「翔子、旦那には未だ、何も言わない方が良いよ。」翔子は、グラスに残っていた水を一気に飲み干し、少し冷静さを取り戻した。「うん、分かってる。今は未だ、何をどう話したら言いか、分からない!」
二人はその場で別れた。

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