パチンと男は指を鳴らした。
「もう、死んでいいよ」
瞬間、俺の眼前にあり得ない光景が広がった。
「二つ、四つ、八つ、十六…」
男が数字を呟くと共に、その周囲に先刻切り刻んだ人形と瓜二つの物体が次々と現れ、俺を取り囲むかのように配置された。
「中々壮観だろ?此だけの数の人形に囲まれるってのは」
男は笑みを浮かべながらそう言った。
それぞれの人形が刃物を取り出す。確かに壮観だ。
ここまで一糸乱れずの同じ行動を中央から見ているのだから。
怒りで熱くなっている筈の思考の中でさえそう思えるほどに不気味で無機質で奇麗だった。
「上等だよ…!」
そう言って俺は剣を構えた。
「全て…焼き斬ってやるっ!」
そう息巻く俺を見て男は唇の端を吊り上げた。
「良いねぇ…」
その言葉が合図だった。
「ギギギッ…」
全ての人形が刃物を振り上げこちらに向かってきた。
「……」
ゆっくりと息を吐き俺は刀を握り直した。刹那、刀身が白から紅に変わる。
「来いよ…」
――もう何がどうなっても構わなかった。
「…マネキン共がっ!」
叫ぶのと剣を振り上げたのは完全に同時だった。