?崖淵斜陽館番外編?

亜樹  2006-07-02投稿
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白髪の、70代の男性が部屋で、沈み行く夕日を窓越しに見つめていた。

沈黙を破る様に、身成りの良い青年が部屋に入り込んで来たのだった。

「スイマセン、鞄を少しの間預かって貰えませんか」

息を切らした青年は老人が、答える前に深く頭を下げ鞄を置いて立ち去ってしまった。


呆気に捕られた老人は何事か解らないまま、置いていかれた鞄を見つめていた。


実は、この老人は売れない絵描き…
実は死にに来ていたのだったが。

「しょうがあるまいて、戻って来るまで預かっておくとするか」

老人は、鞄の中身が気に成り出した。

一体何が入って居るのか?
何故置いて行ったのか?


鞄の中身を想像する楽しみが出来たのだった。

危険物か?
老人は、キャンパスを出すと、絵を書き殴る…
不思議な事に、新しいジャンルの、恐ろしい絵が出来上がった。

役立つ研究の資料が入っているのか?と想像すると、天使が抜け出る様な絵が書き挙がる。
偶然通り掛った画商は一目見て、老人に絵を高く売って欲しいと懇願した。

果たして、この鞄は、幸福の鞄だったのだろうか。

老人の心から、スッカリ死と云う文字が消えていたのだった。

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