相変わらずあの蒼い砂漠はニタリと笑って、わたしを見下ろしている。
いつもと変わらない変哲のない日常が始まるのだと皮肉に笑ったわたしを、彼は陽気に笑い飛ばした。
「キミって、よほどヒマなんだねぇ」
満面の笑みを浮かべたその男の顔に覚えはない。それなのに知っている…気持ち悪い感覚が襲った。
「…どこの犯罪者だテメェ、警察に突き出すぞ」
自分でも阿呆らしいと思えるほど冷静だった。
「もっと違う反応がほしかったなあ」
張りついたような笑顔に居心地の悪さを感じた。
そもそもこの男は一体誰なのか。断りもなく他人の敷地に入って来て、こともあろうにわたしの前で仁王立ちしている。
「ふざけんな。大体、アンタ誰だよ?」
「空だよ。蒼空」
「…ッチ、偽名か」
「反応つまんねぇ」
笑顔で呆れられた。感じが悪い。
蒼 空、そう名乗った男の第一印象は最悪だった。