奈央と出会えたから。<310>

麻呂  2009-01-22投稿
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* * * * * *

『中間テストの答案用紙を返す。名前を呼ばれたら取りに来るように。』



担任の渋川の担当教科は数学だ。



だから、あたしは数学が大嫌いだった。


『木下奈央。』



はぁ。今回はヤマが外れちゃったから、きっと平均点以下だろうな。



『奈央、どぉよ?!点数良かった?!』


渋川から答案用紙を受け取り、自分の席に着こうとするあたしに、聖人が笑顔でそう言った。



『あはっっ。76点だった。』



『マジ?!良かったじゃん。この前の勉強の成果だな?!』


『うん。でも今回は平均点高いって渋川言ってたじゃん。』


『素直じゃねぇなー。喜べよ、70点代なら俺ならキセキだぜ?!』



『あはははは。聖人ってば、笑わせないでっっ。』



どうせなら――



あなたと2人で起こしたいな――



2人にとっての、



キ・セ・キ♪



『こらっ!!そこっっ!!北岡と木下!!』



採点された答案用紙を配りながら、



渋川の注意は、あたし達に向けられた。


『北岡、お前の答案用紙は何だ!!』



そう言った渋川の手には、聖人の答案用紙だけが握られている。



『は?!何がだよ、渋川。早く返せよ、俺の答案用紙。』



『バカモノ!!お前の書いたバカな解答を、今ここで発表する事にする!!

えぇ、みんな、問5の文章問題に注目してほしい。』



『ヘッ、一体何だってんだよ。』


聖人は、渋川にそれ以上何も言わずに、自分の席に着いた。



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