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『中間テストの答案用紙を返す。名前を呼ばれたら取りに来るように。』
担任の渋川の担当教科は数学だ。
だから、あたしは数学が大嫌いだった。
『木下奈央。』
はぁ。今回はヤマが外れちゃったから、きっと平均点以下だろうな。
『奈央、どぉよ?!点数良かった?!』
渋川から答案用紙を受け取り、自分の席に着こうとするあたしに、聖人が笑顔でそう言った。
『あはっっ。76点だった。』
『マジ?!良かったじゃん。この前の勉強の成果だな?!』
『うん。でも今回は平均点高いって渋川言ってたじゃん。』
『素直じゃねぇなー。喜べよ、70点代なら俺ならキセキだぜ?!』
『あはははは。聖人ってば、笑わせないでっっ。』
どうせなら――
あなたと2人で起こしたいな――
2人にとっての、
キ・セ・キ♪
『こらっ!!そこっっ!!北岡と木下!!』
採点された答案用紙を配りながら、
渋川の注意は、あたし達に向けられた。
『北岡、お前の答案用紙は何だ!!』
そう言った渋川の手には、聖人の答案用紙だけが握られている。
『は?!何がだよ、渋川。早く返せよ、俺の答案用紙。』
『バカモノ!!お前の書いたバカな解答を、今ここで発表する事にする!!
えぇ、みんな、問5の文章問題に注目してほしい。』
『ヘッ、一体何だってんだよ。』
聖人は、渋川にそれ以上何も言わずに、自分の席に着いた。