2-? 春の陰
その日は,朝から体がだるかった。
― 風邪かな?
純はそう思ったが,
教室を楽しみにしている子供達の為にも,休む訳にはいかなかった。
最後の子供を帰した後,
少し後悔した。
体調が悪かった為,子供達の話をちゃんと聞いてあげられなかったのだ。
子供達は,書道より純と話す事を何よりも楽しみにしている。
悪い事をしたと,
純は申し訳なさでいっぱいだった。
今日はさすがに散歩へは行かなかった。
桜並木の女の事が気になったが,今はそれどころではない。
朝よりも,体が重い気がする。
『何だその顔色は!?』
純の兄,京太郎は思わず大きな声を出した。
辛そうに振り向いた純の顔色は,今まで見たことが無い程真っ青だった。
『兄さん,すみません,
少し,体調が悪いみたいなんです‥。今日は,もう休みます‥。』
純は途切れ途切れに言った。
『ああ,早く休め。きっと疲れが出たのだろう。』
京太郎はそう言ったが,純の顔色を見る限り,ただの風邪では無いのではないかと,心配した。
『はい‥お先に,失礼します。』
その時,純はよろけて壁に手を付いたかと思うと激しく咳き込んだ。
床の上に,大量の血が一気に広がった。
純は,
崩れ落ちる様に,そのまま気を失っていた。
●○続く○●