合宿当日の朝。
ぞくぞくとジャージ姿の3年生が一晩分の荷物を持って校門をくぐっていく。
男子は手ぶらのヤツがちらほらいるのと対照的に、女子は何泊するつもりだ?と疑うほど大きな荷物を持ったりしている。
全員体育館に集合させられ先生から合宿のしおりを見ながら長々と説明があった。
案の定、俺は中級クラスでユキちゃんは上級クラスに振り分けられていた。
各教室へみんなが移動し始めた。
俺は朝からまだ一度も会ってないユキちゃんを必死に探した。込みあった渡り廊下で数メートル先にユキちゃんを発見した。
人込みを掻き分けて声をかけようと踏み出した瞬間…
「平井君くん♪クラスどこだったぁ?私は中級だったよ。え?うそ!一緒じゃ〜ん!一緒に行こう」
げっ、苦手な女子が声をかけてきた。安田だ。
中学1年のとき同じクラスで何度か告白めいた言葉を言われたことがある。
安田の質問攻めに遭い、渋々会話をしていると、少し前にいたユキちゃんが一瞬振り返った。
「あ、ユ……」
目が合った気がしたが、ユキちゃんは俺に気づかなかったらしく、また前を向いてしまった。
俺は隣でまだしつこく質問してくる安田を恨んだ。