Monstars Da-Capo

キリン  2006-07-02投稿
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エグロンはルナン王国の辺境にある貧しい村である。
ただ国や村の名前や位置さえ知らない村人たちでも、ウー・ラシルのことを知らぬ者はいないはずだ。

「何だと! もういっぺん言ってみろよガザ!」

「何でそんなに怒るんだよ、シヴァ? わからないから、ちょっと聞いただけじゃないか!」

少年がふたり、村の中央にある広場でにらみ合っている。
ひとりは明らかに身なりの良い恰幅が良い少年だ。
そしてもう一方は服も垢じみてボロボロな少年だ。
その周りを大勢の子供たちが取り囲んでいる。

「お前のお袋ってお前にメシを食わせるのに、親父以外の男のアレ、くわえてるって本当か、って!」

恰幅の良い少年――ガザはそう言って、嘲笑した。
周りがどっ、と受けて、対照的にシヴァはさぁ、っと真っ青になった。
怒りのためである。
確かに彼の母親は貧しさのためにそういった職に手を伸ばしていた時期があった。けれど、それもずいぶん昔の話で、シヴァが一家の働き手となった今ではとっくに足を洗っている。
それをガザはどこからか聞いてきたのだろう、こうしていじめの材料にしているのだ。
しかし、周りの子供たち――いや、遠くからこの諍いを見ているはずの大人たちも、誰もガザを止めようとはしない。
なぜならガザはエグロンでも一、二を争う小作人の多さを誇る豪農の息子で、その権力をかさにするため、無闇に逆らえないのだ。

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