陵子はホームに立って電車を待っていた
今年の冬は私の身体に寒さが突き刺さり体温を奪い気分を憂鬱にした
♪♪♪〜
「危ないですからホームの内側でお待ち下さい」
列車がホームに入ってきた時一瞬めまいがした
寒さのせいだと思いそのまま会社に出社した
午後の残業も終わりいつもの帰り道メールが届く
「今日は9時過ぎに行くよ」
「分かった、待ってる」
二人の会話はいつも味がなく事務的だった
それでも陵子は会えるだけでも嬉しかった
部屋で待っていると俊朗が慣れた手つきで部屋の扉を開けた
ガチャ…
部屋に入ると俊朗はいつものようにソファーに腰を掛けて外国製のタバコに火をつけた
俊朗は深いシワがあり老けて見えたが陵子はその横顔がたまらなく好きだった
でも陵子は知っていた
俊朗が消える事を…家庭が大事な事も…自分は愛人だということも…
時々見せる俊朗の苛立った横顔が陵子に全てを語っているようだった
「今日は泊まれないんだ
夜中に帰るよ」
「今度はいつ来るの?」
「最近仕事が忙しくてわからないよ」
「いいよ、もう会いたくないんでしょ!」
「もう帰るよ…」
そう言うと俊朗は部屋から出ていった