ロストクロニクル7―1

五十嵐時  2009-01-23投稿
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「おはよー!タクト」
タクトが図書館から出てくると既にパールたちはそこにいた。東の空から弱い朝日が射していた。
「おはよう」
パールの肩から覗いている包帯を見ると、やはり責任を感じてしまう。
「ここはパラスの真南です」
王立図書館は少し南に歩けばパラスの最南端の海が見えてくる程の位置にあった。
「そして、僕たちには行くべき場所はないですよね。そこで、この近くでいちばん近い町を探してみました」
フラットは一枚の地図を取り出した。地図には北西の位置に丸く印がされていた。
「タクトさんの持っていた地図に描いちゃいました」
フラットは「ごめんなさい」と言うと続けた。
「この町は『鏡の宮殿』という建物があるんですけど、知ってますよね?」
パールは「知ってるわ」と当然のように返事したが、二人はただ黙っていた。
フラットは意外な顔を見せたが続けた。
「でも、この町にはひとつ問題が・・・」
フラットは困った顔をした。
「なんだ?もったいぶらずに早く言え」
ウェドが眠たそうな声で急かす。
「それが、この『鏡の宮殿』におかしなムシが住みついてしまっているらしいんです。それでも行きますか?」
「どうせまだ『不死鳥』のパーツは頭しかない。それに、これといって行く場所も無い。怪しい場所には行っておいたほうがいいだろう」
「胴体も忘れちゃ駄目だ」
タクトは『不死鳥』の胴体を取り出した。
ウェドはいつ手に入れたのか問い質してきたが、タクトは「オーケスを発つ時に国王から授かった」の一点張りで通した。その様子を見ていたパールはいたたまれない気持ちになった。
「ということは残りの『木彫りの不死鳥』のパーツは『脚』と『翼』と『王冠』ですね」
フラットがひとつずつ確認するように三本の指を折りながら数えた。
「『勇者の血』もね」
パールが付け加えた。
「話が逸れたけど、行くんでしょ?」
パールはタクトに問いかけた。
「えっ?ん、ああ」
「タクト、またボーッとしてたわよ。本当に大丈夫?」
「大丈夫さ」と返事しようとした時
「痛っ!」
ウェドがハンマーの柄の部分でタクトの腹をつついていた。
タクトは予想以上の激痛に腹を抱えた。
「この腹を治す為にも早くその『鏡の宮殿』っていうやつがある町へ行こうじゃないか」
三人は図書館から北西へ歩き出した。



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