サー―・・・・
あの音だ。
オレから全てを奪った音。
オレの大事なものを全て。
なんでだ?
これは夢か??
音が止まない。
止め、止め!
嫌だ、聴きたくない。
止め、止め!!
―――――・・・・・
「・・ちゃ・!・・ん!」
「お兄ちゃん、お兄ちゃん!!」
少女の声が、まるで天からの光のようだった。
ウィルは悪夢から覚めた。若干、クリスの音波のなごりが、エコーのように頭を締め付けていたが、もう起き上がれるようだ。
ウィルは重い体をゆっくり起こす。
「お兄ちゃん・・・はい、ハンカチ・・・」
目をそらすようにマリアがハンカチを手渡す。その時初めて自分の恥態をさらしていることに気付き、乱暴にマリアのハンカチをとる。
「きったねぇ―・・・」
顔中に付いた液体という液体をあわてて拭いていく。
「お兄ちゃぁん!急いで!」
マリアが必死にせかすのには訳があった。
クリスのせいでぼやけていた聴力が甦っていく。
様々な音が聴こえる。
サイレン。
街の人々の声。
走る足音。
そして
なにか重いものが
次々と崩れていく音。