恋の迷宮?

超ナタデココ  2006-07-03投稿
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「とにかく…急がなくちゃ。 あ!こっちかも。」
不意に見えてきた明るい道に駆けていく。
と、その時丁度彼女に向かってチャリが疾走してきた。
キキィィィィ!!


雨の音の旋律を乱すそれがなり響く。
ブレーキ音を最大限に鳴らすと、自転車は彼女の前で止まった。
自転車がぶつからなかったのを確認し、夏美は恐る恐る目を開ける。
視界に、ブレーキを握り締めた男子が入ってきた。

「おい!いきなりあぶねぇだろ!
 ……って…!夏美!?」
男子の声に、夏美はぱっと彼の顔を見た。
彼女同様、陸上部一年の男子だ。
驚いて、それでいて戸惑ったような表情が窺える。
「あ〜、冬樹くんこんなとこで何やってるの?もしかして迷子?」
夏美の言葉に男子――冬樹は首を横に振る。
「ち……違、別にそんなんじゃねぇよ」
ぶっきらぼうな否定の言葉に、夏美はなんだと肩を落とした。
そして、雨の音に消えるような小さなため息をつく。
「あれ、せっかく仲間ができたと思ったのにぃ…
 じゃ道教えてくれる?
 学校行きたいんだケド、競技場からじゃわかんないや」
夏美の頼みに、彼は一拍程悩むと今度は首を縦に振った。
自転車を方向転換しながら、顔だけを彼女の方に向ける。
「とりあえず俺についてこい、あと使えよ。」
自転車に挿していた傘を取り出すと、夏美に差し出す。
夏美はそれを受け取ると、天上へと向け開く。
夜の色に似た紺の傘が、バッと広がった。
雨が傘をうち、多少虚しさを感じさせるような音を奏でる。
「あ、ありがと。傘差し運転は危ないからね、うちが預かっとく」
素直になれよ、という意味の舌打ちをしつつ、冬樹が頷く。
そして、冬樹先導の下、二人は学校へと向かった。



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